「ろくでなし啄木」を見た。

藤原竜也中村勘太郎吹石一恵の3人芝居。DVDでみました。三谷幸喜作、演出。わたしは舞台の三谷幸喜作品は去年の「大地」から2作目でした。

題名にもある通り、石川啄木のお話です。藤原さん演じる啄木と、その恋人のトミさん、啄木の友人のテツさんと3人で温泉旅行に来ているのですが紆余曲折あり啄木がその日2人の前から姿を消します。3人のそれぞれの視点からその日の真実が語られる構成で、その12年後にテツさんとトミさんが偶然再会し、その頃には亡くなってしまった啄木の像を見上げ、旅館での出来事の話をし始める所から物語は始まります。

とんでもないテンポ感と勢いで始まって追いつくのがやっと。まあもう当たり前ですけど勘九郎さんのセリフが聞きやすいのなんの、吹石さんもこれが初舞台だったそうですがさすがのさすがで2人のテンポに呑まれることなく可愛らしい女性を演じてました。

大地の時もそうだったんですけど、もちろん結末はすとんお腑に落ちるような感覚であ〜観劇した!って感じがしてスッキリするんですが、途中にとんでもないトゲが飛ばされて心に刺さってそれが最後まで、というか見終わってもしばらく取れない、苦しい、みたいなシーンが途中ありまして。今回のお芝居でいうと勘九郎さん演じるテツさんが啄木をなじるシーンです。作家を志す啄木にとって善人である事より、最低な人間である方が作家らしく、人の本当の心理をかけると思っていることを指摘し、啄木がしてきた「悪いこと」など自分が見てきた、してきた「悪いこと」には足元も及ばない、可愛いもんだ、本当の悪いことを教えてやると怒りをあらわにするんですが、ここまでどんな啄木の悪態にも笑って受け流し、どこまでもお人好しに見えたテツさんのこのセリフはあまりにもショッキングで、このお芝居を見た人は1人残らずこのシーンを忘れる事はないんじゃないかな。

善人は悪人がつくり、悪人が善人をつくる。そんな原理が世の中にあったりして。なかったりして。